東京 三軒茶屋にオープンした、山形県河北町のアンテナショップ「かほくらし」。
今回は、かほくらし名物店長を務める、山本 徹さんにお話を伺いました。
山本さんと河北町との出会いには、偶然がいくつも重なったような数々のきっかけがあるようです。多くの人との出会い、そしてそこから始まった新たな取り組みやチャレンジ。それぞれに魅力的なストーリーがあります。
今や河北町について“ベテラン”の山本さんの言葉からは、溢れるほどの河北町愛を感じました。
偶然に導かれた河北町との出会い
山本さんと山形県にある河北町が出会う最初のきっかけは、なんと九州での出来事。どんなご縁があったのでしょうか。
服部学園で食育関連のイベントプロデュースなどに携わっている、山本さん。それ以前にも、日本捕鯨協会で捕鯨についてのPRなど、様々な地域や団体のPRを担われていました。
「捕鯨のPRで様々な地域でイベントなどをしている中で、長崎県平戸市の生月島という地域のお手伝いをしました。九州の西のはずれにある、電車も通っていないような離れ小島で古い漁師町です。
食生活ももちろん昔から変わっていなくて、魚は刺身が一番!というような方々ばかりでした。ただ、醤油についてはうるさいんですけどね(笑)
そこで、新しい食文化に触れてもらおう、と南青山にあるイタリア料理店ACQUA PAZZAのオーナーシェフ日高良実さんを招き、地元のお母さんたちにアクアパッツァの料理講座をしました。地元で獲れた新鮮な魚にオリーブオイルを使うだけでこんなに美味しくなるんだよ、ってね。」
かほくイタリア野菜の普及にも尽力いただいている、日高良実シェフ(左)と落合務シェフ(右)。
「その日高シェフから、東北に面白い奴らがいる、と聞いたのが、かほくイタリア野菜研究会のメンバーでした。その時も河北町に一緒に行かない?と誘われたんだけど、タイミングが合わなくて。
その後、唐津くんちという佐賀県のお祭りに遊びに行った時に、お祭りのガヤガヤとしてる中で日高シェフに紹介されて、かほくイタリア野菜研究会の4人と挨拶したのが初めての出会いです。その日は、おくんちならではの楽しみ方で夜中まで連れまわされてみんなで飲んだくれましたよ。」
偶然に偶然が重なり、出会った山本さんと河北町。山本さん然り、かほくイタリア野菜研究会、他周りにいる人それぞれが、誠実に人との関係を築いてきたからこその巡り合わせなように感じました。
この出会いを発端に、山本さんと河北町との距離がグッと近づいていきます。
「服部学園の仕事で、たまたま山形県庄内の鶴岡という地域に取材で行くことになりました。お米と米俵を作っている田和楽という会社があって、そこに行ったんです。そこで、たまたまかほくイタリア野菜の話になって、そこの佐藤社長がそのイタリア野菜研究会のメンバーはみんな友達だよ、と言うんですよ。驚きましたね。
その日、本当は河北町にも行こうと思っていたのですが、雪がすごいから来ちゃダメだと言われていました。でも、佐藤社長が月山を見ながら、大丈夫今日はいけるよ、と。それで雪が降る中、車ですっ飛んで行ったんです。それで、かほくイタリア野菜研究会の彼らと久しぶりの再会をしました。
この時、河北町のソウルフード『冷たい肉そば』の洗礼を受けて、一気にはまりました。真冬なのにお汁がキンキンに冷たいんですよ(笑) これがまた超美味い!」
食べ物も、人も豊かな河北町
「イタリア野菜の畑を見せてもらうと、本当に広くて面白い!イタリアのポロネギとの出会いから作り始めたかほくイタリア野菜だけど、作るのがとても大変で、手探りで3年以上かかってやっとこさできたものなんです。それから10年、今では東京などを中心に出荷されて、注目されてきています。
紆余曲折を経てできた、かほくイタリア野菜研究会という河北町の農家の団体があって、その中心が会長で米農家の牧野さん。それと商工会の芦埜さん、この二人が同級生なの。この二人だけでなく、河北町の中って、地元で育った同級生の輪で繋がっているんです。彼らがみんなで何かやろう!とするとできちゃう町なんです。面白いですよね。」
人の繋がりの強さも魅力の河北町
山形といったら雪深くて静かなイメージがあったけど、行ってみてみたらすっごく豊かなんだよ、とフランクにお話しいただいた山本さんの言葉から、河北町への愛とこれからのまちづくりへの期待を感じました。
「河北町のモノやコトには、背景に全てストーリーがあるんです。それが面白い。それと、人が何しろ面白い。ドライブインのおばちゃんたちがやけに面白かったり、河北町の周りにもこだわりのある生産者がたくさんいるんです。」
河北町のグルメにもとっても詳しい山本さん。ソースカツ丼の名店「江波戸」へも足を運んでいます。
「そのいろんな場所を訪ね歩いているうちに、どんどん河北町の魅力にハマっていって。行けば行くほど面白いところが毎回見つかるんですよ。僕が河北町に深入りしているのは、仕事としてというよりは趣味みたいなものですね。」
名物店長としての役割、これからの河北町への想い
「今回、河北町アンテナショップ『かほくらし』の名物店長という立場になりました。僕の役割は、河北町と他の地域を繋いだり、アテンドしたり紹介したり…そういうのが名物店長の仕事だと思います。」
完成前のかほくらし。2019年新春に、待ちに待ったオープンとなりました。
「一言で言えないくらい、いろんな魅力がいっぱいあるところが河北町の魅力。
特産品や名物を山に例えると、河北町というのは、大阪でいうたこ焼きみたいなコレという高い山はないんだけど、登って知ってみると素晴らしい山がたくさんあるんだよ。
特産品だけでなく、豊かな自然もあって、特に桜の季節に、満開の桜の木々の間から見える名峰『月山』は、河北町からの眺めがどこから見るよりも美しいんだよね。本当に。まあ、魅力いっぱい。これまで何十回と行ってるけど、まだ掘りきれてない。掘っても掘っても掘りきれないんだよ。」
山本さんが河北町と他の地域を繋ぐ中心になっているんですね、とお伝えすると、「僕は中心というよりは、端っこ。月山の中腹あたりかな(笑)」とユーモアたっぷりにお話いただきました。
様々な地域を繋ぐ中、河北町では特に東京との繋がりをたくさん作ってきた山本さん。
「アイディア料をもらっとけばよかったなあ、というのがいっぱいあるんだよ」と、河北町への深い愛情が伝わる、大らかな笑顔が印象的でした。
「僕は以前からずっと、河北町への交流人口を増やしていきたいと思っているんです。町を離れてしまった人を戻すにはどうしたらいいか、新しい人に来てもらうにはどうしたらいいか。小学生同士の交流をしたりとか、これからに向けていろんな話を進めています。」
山本さんからお聞きした、たくさんの河北町のお話。聞いただけで、河北町マスターになったような気持ちになりました。山本さんの愛情あふれる言葉からは、こちらも「訪れたい!」と思うほどの魅力が伝わります。
そんな山本さんの素敵なアイディアやサポートが加わり、形作られていく河北町のこれから。どんな面白いことが始まるのか、とても楽しみです。
記事/さとゆめ編集部