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豊かな自然に囲まれて住まいの価値を見つめ直す“タイニーハウス”の小さな暮らし。後編 「小菅村タイニーハウスプロジェクト事務局 和田隆男さん」

豊かな自然に囲まれて住まいの価値を見つめ直す“タイニーハウス”の小さな暮らし。後編 「小菅村タイニーハウスプロジェクト事務局 和田隆男さん」

こんにちは。さとゆめ編集部です。

「ふるさとの夢をかたちに」をテーマに、日本全国で地域政策の伴走型コンサルティングをしている株式会社さとゆめ

今回ご紹介するのは、山梨県小菅村で「小菅村タイニーハウスプロジェクト」の座長を務める一級建築士・技術士の和田隆男さん。25年にわたり、村の約95%が森林を占める自然豊かな小菅村で、木という地域資源を活用した建築を手がけています。

前編では、小菅村を訪れ、タイニーハウスプロジェクトを始めるまでの話をお伺いました。後編では、タイニーハウスの思想や今後の展望をお聞きします。

■多くの人にタイニーハウスを知ってもらいたい。そこから生まれたデザインコンテスト

タイニーハウスプロジェクトではどのような活動をされているのでしょうか。

「活動軸は2つあります。1つは、小菅村にタイニーハウスを増やしていくこと。もう1つはタイニーハウスそのものを日本中に広めていくことです。

後者の取り組みとして、YADOKARIさんと一緒に『タイニーハウスデザインコンテスト』を実施しています。余った補助金を利用して2017年に第1回を開催しました。初回は100組だったエントリー数も2019年には756組まで増え、対外的な広報につながっています。」

コンテストの最優秀作品は実際に建設されるんですよね。

「はい。これまでに4棟建設しており、実際に住まいとして活用しています。かなり奇抜なアイディアもあり、とてもおもしろいですよ。また、2019年には約半数が学生からの応募でした。私は、これからの住まいを求める若者にこそ、タイニーハウスを通じて住まいを考え直してほしいと考えています。」

■その価値観は誰のもの? タイニーハウスを通じてライフスタイルを考え直す

住まいを考え直すというと?

「私が考えるタイニーハウスは広さで規定されるものではなく、『人生における家の立ち位置を考え直す』ことが根本の思想です。

昔は、必死に働いて家族のために数千万円投じて家を買うことが人生の目標の多くを占めていました。しかし、実は今、建築資材の低質化もあって世代を超えて受け継ぐことは難しく、また、法律的にも30年を超えると価値がないものとして扱われるので、家=資産とは限らないのです。人口減少や空き家住宅の増加など私たちの住宅事情は大きな変化に直面しています。こうした住宅事情を鑑みると、家は大きい方がいい、といった価値観自体を問い直す必要があると思っています。大きさや資産としてではなく、自分が住みたい家はどうゆうものだろうと考えてほしいと思います。」

「理想の住まい」はどのように考えていけばよいでしょうか。

「一般論として考えるのではなく、自分はどんなライフスタイルを望むのかから考えることが重要です。タイニーハウスには、狭い空間だからこそ自分で住みやすさを追求し工夫する新鮮さやおもしろさがあります。また、ファミリーで暮らす方からは『人と人とが近い生活になった』との声も聞きます。狭い分子ども部屋などもなく家族が一緒の空間で過ごしますから、引きこもりや断絶が起こりにくいですよね。それから、建築や購入費用を抑えられるので、そこで浮いた資金をより人生を豊かにする別のものに使うこともできます。自分や家族の中で住まいの比重を少し下げてみると色々な住まい方が見えてきます。その一つがタイニーハウスという選択肢だと思います。」

■自分の生活は自分で作り、守っていく。これからの地方創生に必要なこと

現在は小菅村に移住されていますが、地域づくりについてはどうお考えでしょうか。

「外部に依存せず、村や町単位で小さくても経済を回せるようになることが必要だと考えています。昔は、人々が協力して地域内経済をつくり、それが大きくなって都市になりました。でも今では、スーパーなど外部産業が入り地域の商店は消え、内部だけで完結していた経済が失われています。人が集まり住むだけが村や町になっているのです。不安定な世の中ですから、外部ばかりに依存するのは危険です。衣食住を自分たちでまかなう自給自足が都市の原点であり、今改めて必要なことだと思います。」

最後に、今後の展望をお聞かせください。

「今後は小菅村にタイニーハウスを体験できる宿泊施設『タイニーハウス・ビレッジ』をつくる予定です。より多くの方に、ライフスタイルと住まいを見つめ直すきっかけとして、タイニーハウス、そして小菅村に訪れてもらえたらと思います。」

タイニーハウスを通して自分の望むライフスタイルや人生を問い直す。そんな取組が小菅村で進んでいます。

タイニーハウス巡りに足を運んでみませんか?

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http://tinyhouse-kosuge.com/

記事/さとゆめ編集部