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世界農業遺産認定!日本が誇るふるさとの暮らし「高千穂郷・椎葉山地域」

世界農業遺産認定!日本が誇るふるさとの暮らし「高千穂郷・椎葉山地域」

南国の暖かく穏やかな風土や海、その気候が生み出す数々の特産品のイメージがある、宮崎県。実は、山間の地域にも魅力がたくさんあるんですよ。

宮崎県北西部、九州のほぼ中央に位置するこの地には、「高千穂郷・椎葉山地域」と呼ばれる地域があります。高千穂郷・椎葉山地域は、高千穂、日之影町、五ヶ瀬町、諸塚村、椎葉村の5つの町村により形作られています。

高千穂郷・椎葉山地域は、古くから自然と人々の共存関係、そして地域に根付いた伝統文化を育くんできた場所。

森林に囲まれ平地が少ない中、山の斜面などの土地を生かし、針葉樹による木材生産や広葉樹を活用したシイタケの生産など、地域の土壌に合わせた暮らしを営んできました。

また、和牛や茶葉の生産、棚田での稲作など、地域でできることを1つ1つ組み合わせながら、地域農業の仕組みを築き上げてきた歴史があります。

こうした土地の環境や性質を生かした伝統的な農法が認められ、2015年に高千穂郷・椎葉山地域は「世界農業遺産」に認定されました。

名勝として名高い「高千穂峡」

世界農業遺産とは?

高千穂郷・椎葉山地域が認定された「世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS):ジアス)」は、イタリアのローマに本部を置く、食料の安定確保を目指す国際組織「国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization(FAO):ファオ)」の主導により、2002年(平成14年)から始められた国際的な枠組みです。

現在の認定地域は世界各国に広がり、21カ国の52地域が世界農業遺産に登録されています(2018年10月現在)。

世界農業遺産のプロジェクトが始まった背景には、農業の行き過ぎた大量生産への偏りが、森林破壊や水質汚染等の環境問題、また地域の文化や景観の破壊、生物多様性の消失を近年世界規模で引き起こしていることが挙げられます。

世界農業遺産の目的は、こうした近代化の中で失われつつある土地そのものの環境を生かした伝統的な農業、残された農村の文化・景観や生物多様性が守られた土地利用を「地域システム」として認定し、それらを一体的に保全、また次世代に継承していくことです。

ユネスコが主導する「世界遺産」が世界各国の歴史的建造物、自然景観などを登録し保護することを目的としているのに対し、世界農業遺産は地域システムを独自に認定することで、保全活動に繋げていくことを目標としています。

世界が認めた、高千穂郷・椎葉山地域”山間地農林業複合システム”

高千穂郷・椎葉山地域は、「山間地農林業複合システム」が高く評価され、世界農業遺産への認定につながりました。

焼畑

伝統的な焼畑は古くは日本各地で行われていましたが、椎葉村で現在も行われているものは日本で唯一現存するものとも言われている大変貴重なものです。椎葉村では焼き場を毎年移し、4年程度穀類を栽培した後、休閑期を設けて森林を再生させる循環型の農業システムを進めています。

木材生産とモザイク林の形成

諸塚村の森林では、伝統的な保全管理が今も続けられており、全国有数の木材産地となっています。名産品の椎茸の原料となる落葉樹林、スギなどの針葉樹林、そして1年を通じて緑色をした照葉樹林が織りなす特徴的な高千穂郷の森林景観は通称「モザイク林」とも呼ばれています。

山腹水路網と棚田

高千穂郷・椎葉山地域には、総延長500km以上の山腹水路網と、1,800haを超す棚田があり、日本棚田百選にも選ばれている棚田があります。

空を映す鏡のような水田、黄金にたなびく稲穂…季節ごとに移ろう棚田の景色に、日本の原風景を見ることができます。

様々な伝統的な農林業

日本発祥の地とも言われる椎茸の栽培や、日本一の生産量を誇る釜炒り茶、少数を大切に丹精込めて育てる伝統を受け継ぐ和牛生産など、高千穂郷・椎葉山地域は山間地域の特徴的な農林業を現在も受け継いでいます。

地域の伝統文化

高千穂郷・椎葉山地域には「神楽」など、伝統農法を通じて生まれた特色ある伝統文化が継承されています。

フォレストピア構想

高千穂郷・椎葉山地域では、豊かな森林資源を活用した地域づくりを目指す「フォレストピア構想」を掲げ、実現するための全国初の学校となる五ヶ瀬中等教育学校を設立するなど、次世代の政策が進められています。

隠れた特産品!滋味溢れる味わいの乾物

世界農業遺産にも認定される、高千穂郷・椎葉山地域の豊かな風土。そこで作られる椎茸などのきのこ類や山菜は、そのままでももちろん美味しいですが、さらに美味しく”乾物”となって私たちの食卓に届けられます。定番の椎茸はもちろん、なんと舞茸やたけのこなども作られているんですよ。

乾物、と聞くとなんだか古臭いイメージや、手間のかかるイメージがありませんか?でも、実は和食だけでなく、イタリアンやエスニック料理にもぴったり。特にたけのこは、タイカレーによく合うんです。どんな料理と合わせるのが好きか、探してみても楽しめますね。

基本の戻し方を覚えておけば、使い勝手の良い食材として普段の料理にとっても便利。長期保存も可能なので、あともう一品作りたい!という時にも、何かと助けられるかも。

旨味と栄養がたっぷり詰まった、高千穂郷・椎葉山地域の乾物をぜひ試してみてくださいね。

高千穂郷・椎葉山地域の乾物について、詳しくはこちら 馴染みある”乾物”を改めて見直そう!「日本もどせるプロジェクト」

古事記、日本書紀、と多くの神話が残る、高千穂郷・椎葉山地域。古より人々の暮らしが営まれてきたこの地では、今なお自然や農業を守り続けるとともに、伝統ある神楽が伝承され続けており、暮らしの中に伝統と歴史が馴染み、息づいています。

ぜひ一度、その空気を、肌で感じてみませんか?

記事/さとゆめ編集部