豊かな自然に囲まれて住まいの価値を見つめ直す“タイニーハウス”の小さな暮らし。前編 「小菅村タイニーハウスプロジェクト事務局 和田隆男さん」
こんにちは。さとゆめ編集部です。
「ふるさとの夢をかたちに」をテーマに、日本全国で地域政策の伴走型コンサルティングをしている株式会社さとゆめ。
今回ご紹介するのは、山梨県小菅村で「小菅村タイニーハウスプロジェクト」の座長を務める一級建築士・技術士の和田隆男さん。25年にわたり、村の約95%が森林を占める自然豊かな小菅村で、木という地域資源を活用した建築を手がけています。
和田さんには、小菅村への移住を決めた経緯やタイニーハウスの思想、プロジェクトの活動内容などをお話いただきました。前後編でお送りします。
■東京から、温泉施設建設をきっかけに小菅村へ
和田さんが小菅村と出会ったきっかけから教えてください。
「約25年前に小菅村で温泉施設をつくる話があると知人から紹介され、訪れたのが最初です。父が職人で、もともとものづくりやデザインに興味があり、建築家の道を選びましたが、当時は東京で仕事をしていたので、小菅村のことはその時初めて知りました。
小菅村は森林が約95%を占める村で、最初は想像以上に山奥で驚きましたけれど、これだけ豊富にある資源を使わない手はないと思い、木造の温泉施設を提案しました。それを気に入っていただき、以来、4代の村長さんにお世話になっています。」
和田さんが手がけた小菅村役場外観
小菅村ではどのようなものを手がけられてきたのでしょうか。
「道の駅や役場、古民家ホテル『NIPPONIA 小菅 源流の村』など、2年に1棟くらいのペースで村の公共施設などを設計してきました。」
■豊かな自然と都市の原点を小菅村で見た
現在は小菅村に移住され甲府市内と2拠点で生活されているとお聞きしました。
「はい。温泉施設建設をきっかけに、(小菅村や木造建築に)すっかりハマってしまって。私自身、生まれは地方ですが小学生から東京で暮らしていますから、小菅村のような自然豊かな環境が新鮮で魅力的だったんですね。それから、当時の小菅村は今よりも交通網が発達しておらず、外との接触が少なかった。しかし、その中で1300人が暮らしていました。衣食住のすべてが村の中にあって、村の中で経済が完結し、回っている。そこに、都市の原点を感じました。」
移住を決めたのは、なぜだったのでしょうか。
「『地域のためになにかしたい』という気持ちが湧いてきたんです。仕事をするとなると、週1回とかで訪れるよりも腰を据えて地域に浸かったほうがいいと思って。地域おこし協力隊の制度を活用して4年前に移住しました。最初はイングリッシュガーデンをつくりたいと思っていたんですよ。でも、しばらく暮らすうちに村の住宅不足の問題が見えてきて、建築の知見をいかした方が村のためになるのではと考え直しました。それでタイニーハウスに思い至り、やってみませんか、と(村に)お話しました。」
■住宅不足を解決するためのタイニーハウスが地方創生の新たな切り口に
タイニーハウスとはどういったものなのでしょうか。
「タイニーハウスとは、小さな家でシンプルに暮らすという考え方に基づいた家のことです。コンパクトゆえに省資源・省エネ・省マネー、そして地球に優しいサステナビリティーにあふれた家のことです。小菅村にあふれている森林資源の活用にも繋がります。
例えば私が暮らす家は20平米ほどで、その中に寝室やお風呂場、トイレなど生活に必要なものがそろっています。すべてのものが3歩以内にあるくらい(笑)、コンパクトですが快適な住まいです。小菅村の財政を考えると小規模だからこそ1軒あたりの費用を抑えて戸数を増やせますし、資金が潤沢とは言えない中では最適ではないかと考えました。」
それで第1期地方創生総合戦略でタイニーハウスを村の政策として展開し始めたんですね。
「はい。補助金を申請し『小菅村タイニーハウスプロジェクト』が始まったのが3年前です。日本中どこを見ても地方創生でタイニーハウスに取り組む自治体はなく、小菅村が初めてのことでした。ですから、その新しさもインパクトがあり村の広報につながるのではと考えました。実際、3年の間にテレビや雑誌の取材依頼も増えていますし、タイニーハウスをきっかけに小菅村を知り、訪れてくれる人も増えていて、地方創生の切り口としても効果的だったと実感しています。」
前編は、和田さんが小菅村を訪れ、地方創生としてタイニーハウスプロジェクトを始めるまでをお聞きしました。
後編では、タイニーハウスの思想に踏み込み、地方創生への考えもお聞きします。
▼▼第4回 タイニーハウスデザインコンテスト2020開催中!(応募登録2/28 作品提出3/31 まで)▼▼
プロアマ問わず応募できます。ご応募お待ちしています!
http://tinyhouse-kosuge.com/記事/さとゆめ編集部