さとゆめ

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地域の現場から見る 地方創生×働き方改革の今までとこれから

地域の現場から見る 地方創生×働き方改革の今までとこれから

株式会社さとゆめ / 小海町地域おこし企業人の小松です。

2018年2月に地域おこし企業人として小海町役場に赴任して早くも2年8か月。任期もあと4か月となりました。お世話になった小海町の皆様、サポートしてくれた社内外の皆様、応援してくれた他地域のお客様には心から感謝申し上げます。

◆憩うまちこうみ事業の5年

私の担当してきた憩うまちこうみ事業は、小海町のまちづくりの事業であると同時に、町を活用して企業の働き方改革や健康経営を推進し、最終的に社会課題である働く人の心と体の健康にアプローチする事業として、2016年(平成28年度)に立ち上がりました。

町民を中心としたセラピストの人材育成、都市部企業に向けた営業活動、医学的な見地からの効果検証、多くの企業の皆様や自治体の皆様にご来場いただいた地域を活用した健康経営推進シンポジウムなどを通じ、事業開始から5年目となる2020年(令和2年度)9月末現在では、東京や名古屋の企業10社と協定を結び、健康経営のサポートを行っております。

90社220名が参加した健康経営推進シンポジウム

また今年度は平成31年2月に林野庁・国土緑化推進機構により提唱された「森林サービス産業」の健康経営分野におけるモデル地域(全国7地域)の1つとしても選定され、農山村地域と森林のにぎわいを取り戻す先進事例となるべく、事業の推進を行っています。

◆変化する憩うまちこうみ事業の価値

私の企業人としての3年間の任期の中で、元号は平成から令和に代わり、世の中の状況も大きく変化しました。着任して約半年後の2018年(平成30年度)6月末には働き方改革法案が成立、翌年の適用開始を受け、社会的にも人々の心身の健康を重要視する考え方や社員の働き方が企業価値へとつながる流れが活発化し、憩うまちこうみ事業も新たな働き方改革・健康経営のソリューションのひとつとして、企業の皆様に評価していただきました。

そして今はどこの地域でも新型コロナウイルスの影響が大きな課題となっています。

このたった数か月の間に急激に人々の働く環境は変わりました。在宅ワークやオンラインでの会議・研修が一般的となり、通勤時間が短縮されたことにより身体的、時間的な制限から解放された一方、人と会わないことによる孤独感や勤務管理の難しさが生むコミュニケーショントラブル、相談できるタイミングが失われてしまったが故のメンタルヘルスケア問題など、新たなエラーとニーズが発生してきていると感じています。

憩うまちこうみ事業において、このような社会の状況に対し、何かしらの施策が打てないか、企業の問題を解決するサポートができないか、日々考え、実践しています。今年5月にはセラピストと協同し、協定企業の従業員の皆様に向け、小海町の自然を感じていただける動画の撮影・配信を行いました。7月、8月にはセラピストを対象とした人材育成講座を実施し練習を強化、来る受け入れの再開に向けて準備を整え、9月からは安全性に考慮し、受け入れを再開しました。

自宅でも小海町のセラピーが楽しめる動画を作成

◆攻めの働き方改革へ

憩うまちこうみ事業を通じて、多くの企業の皆様からこの事業にかける思いや願いを聞いてきました。

とある企業の会長さんは、「最近の子どもたちは自然に触れる機会が少ない、場を提供して子どもにかえれる機会を作りたい」とおっしゃいました。またとある企業の人事の方は「エンジニアとしてひとりでお客様先に勤める社員のつながりを作ってあげたい」とお考えでした。もちろん、従業員の皆様の働き方に関する意識変化や健康に対する気づきの研修としてのご利用も多くあります。どの会社の方も、社員の幸せや健康を願い、様々な施策を考える中で、憩うまちこうみ事業を選んでいただいております。また、憩うまちこうみ事業での出会いを通じ、小海町への移住をお考えのお客様もいらっしゃいます。この事業が小海町との出会いの場となり、人生の大きな選択を後押しする機会になることはとてもうれしいことだと感じています。

働き方改革というものは明確なかたちがあるものではありません。

企業によって取り組みへの熱度も取り組む内容も違い、一概にどれがいい、といえることはまだまだ多くありません。

その中で小海町の提案する地域を活用した働き方改革は従来の離職、休職を回避するため、生産性を向上させるためだけでなく、従業員の自己実現への後押しや、会社に対する誇りの創出、企業の価値、ブランドに訴求していく新たな働き方改革のご提案になるのではないかなと思っています。

コロナ禍において、オフィスの価値が変わってきているのは皆様もよく知るところだと思います。今年6月には1956年の調査開始以降はじめて、東京の人口が減少したと報道されました。

私たちの生活を支えてきた価値観が少しずつ変わっていき、社会行為が数多く制限されている今、改めて人間の生活に必要なことの見極めやオンラインとリアルの価値の見直しなどがされているのではないでしょうか。 働く人の心と体の健康は今まで以上に何らかの施策を経て守っていかなければならないものへと変化したように感じます。こんな時勢であるからこそ、ひとりひとりが大切なものを見直し、働き方や生き方がよりよいものになるよう目指していく、攻めの働き方改革をするタイミングではないでしょうか。

◆私の働き方改革

個人的な話で恐縮ですが、私は入社時からいかに現場に近いところでサポートできるか、という現場感を意識するようにしています。弊社さとゆめは会社自体が地域に「伴走」することを特徴のひとつとしており、社員にも地域に寄り添った目線、行動、覚悟が求められます。(詳しくはこちらから https://satoyume-media.com/hito/messages_shimada1/https://satoyume-media.com/hito/messages_shimada2/

長野県出身である私は、入社当初から「いつか長野県のためになる仕事をしたい」「拠点を長野に移し働きたい」という目標を持っていました。そのため2016年の長野支社設立後は本社と長野支社を兼任し、多くの長野県内案件に携わってきました。長野支社の職員として担当した最初のお仕事のひとつが小海町の憩うまちこうみ事業の立ち上げです。

地域おこし企業人としての赴任は長野で働きたい、より現場に近いところにいたい、という目標に向かって、私自身の働き方を考え、変えていくための挑戦でもありました。私なりの働き方改革です。

憩うまちこうみ事業は社会課題の解決を目的としているため、情勢によって少しずつ変化するニーズに合わせて事業を展開していく必要がありました。働き方改革という言葉も内容も浸透していない中、事業の方向性やプログラムの内容を決め、推進していくことはとても勇気のいることでした。 また、まちづくりの事業として進めていくためには町内の様々な施設やキーパーソンと深く連携していく必要もありました。もちろん、どなたにもこの事業に対する思いや期待があり、意見が食い違うこと、ぶつかることは何度もありました。

率直に申し上げて、小海町での3年間は今までで最も大変で難しく、少しも楽なものではありませんでした。自分の経験不足や力不足は常に苦しいもので、多くの失敗もしてきています。

しかし、この3年間は目の前で地域が変化していく姿を現場で見ることができ、手ごたえと学びのある期間でもありました。また、今後のキャリアや仕事に対する考え方を見直すきっかけにもなりました。 またありがたいことに、赴任当時から今に至るまで、本社にいたころと同様に、小海町以外のお仕事にも変わらずかかわらせていただいております。これはひとえにお客様のご厚意と社内外のパートナーのサポートによるものと思っております。

観光学を志し、まちづくりを大学時代から数えると早くも10年以上に渡り、地域づくりとかかわってきました。その経験の中においてもやはり現場以上に学べる、変われるところはないと思います。また、現場にいればいるほど、地域こそが「地方創生」の最先端であると感じます。

一般的な働き方改革の意味合いとは違うかもしれませんが、生き方、働き方として、地域での暮らしを選ばれることも自己実現につながる選択かもしれません。