ふくしまオーガニックコットンプロジェクトは、 在来種の綿花を有機栽培で育て、福島に新たな産業を生み出し、福島における持続可能な地域づくりを目指す取組みです。震災後の2012年に始まり、2016年にはコットンの栽培面積は約2.6ヘクタール、収穫量は1トンを超えるなど、大きな活動へと成長しています。
このプロジェクトは、NPO法人ザ・ピープルの理事長 吉田恵美子さんの復興への強い想いから始まりました。
震災を乗り越え、生まれた新しい福島の産業
震災前から古着のリサイクル事業などを運営されていた、吉田さんが代表を務めるNPO ザ・ピープルは、2012年からオーガニックコットンプロジェクトを進めています。
そのプロジェクトを始めるきっかけは、震災直後まで遡ります。
震災が起きてすぐ、福島県いわき市は被災したことに加え、多くの原発事故の避難者を受け入れる状況にありました。そのため、吉田さんはまずモノや人が集まる場所づくりが必要だと、仲間と小名浜地区災害ボランティアセンターを立ち上げられました。
また震災後、多くの農家の方々が風評被害や津波の塩害で農業ができなくなり、栽培放棄地が増えてしまいました。その状況に心を痛め、農業をなんとかできないか、栽培できるものはないかと考えていた時にオーガニックコットンに出会い、地域の農家の方々の協力と共に栽培を始められました。
また、地域の人たちや個人の協力だけでなく、都市部の企業からもたくさんの協力を集め、2017年までにのべ23,000人以上の人たちがプロジェクトに参加しています。
みんなでコットンを植えたり、草むしりをしたり、収穫したり。そういった畑作業をするだけでなく、実際に被災地に訪れ現状を見ることで、復興への理解が深まり、風評被害の対策へと繋がっています。
福島で育み、みんなで紡いだオーガニックコットンのあかりを灯す
さとゆめでは、そのオーガニックコットンの綿花を使って、何かできないかとお手伝いをすることになりました。まずは、原綿を糸にするところから。そのための糸を紡ぐ道具を長野県の木工作家さんと一緒に開発。それから、糸を紡ぐ紡ぎ手を増やしていきました。
手紡ぎで出来上がった糸で作るのは、まずはみんなのシンボルになるようなものを。そうして、東日本大震災7年メモリアルの場に灯す、コットンランプシェードを作ろうと始まったのが「コットン・ランプシェードプロジェクト」です。
ランプシェードが灯るメモリアルイベントで地域がひとつに
東日本大震災7年メモリアルイベントに向けて、作成するコットンランプシェードの数は、311個。それまでは紡ぎ手が2、3人だったところ、古布を使った織物に取り組んでいた地域女性団体「織姫の会」の方々や、オーガニックコットンの栽培に協力していた企業がこのプロジェクトに共感し、糸紡ぎとランプシェード作りに参加してくれました。
そのような多くの方々の協力があり、目標の個数が完成!東日本大震災7年メモリアルのイベントでは、コットンランプシェードのライトアップだけでなく、音楽ライブも開催しました。
コットンランプシェードから溢れる温かい光を見ながら、素敵な音楽に身を委ねて。参加した方々は、思い思いにこの空間と時間を心から楽しまれていました。また、今まで少し距離のあった地域の方々との間も、このイベントを通してぐっと縮まったことを感じました。
ふくしまオーガニックコットンプロジェクトは、産業として見ればまだまだ小さなこと。でも福島の未来への地域づくりにとっては、とても大きくそして素晴らしいプロジェクトです。
さとゆめがお手伝いを始めてから、このメモリアルイベントの開催まで、3年。手間ひまがかかっても、一番は地域のために、そして地域のこれからにとって価値のあることになるように…時間をかけて寄り添う姿勢は欠かせません。
ふくしまオーガニックコットンプロジェクト
HP:http://www.iwaki-otentosun.jp/cotton/
記事/さとゆめ編集部