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現代社会にこそ必要な「森の力」を伝えられる人材を、全国へ。「信濃町森林メディカルトレーナー®養成講座」

現代社会にこそ必要な「森の力」を伝えられる人材を、全国へ。「信濃町森林メディカルトレーナー®養成講座」

こんにちは。さとゆめ編集部です。

「ふるさとの夢をかたちに」をテーマに、日本全国で地域政策の伴走型コンサルティングをしている株式会社さとゆめ。

長野県信濃町は、前回ご紹介した高力一浩さんの「森の力で日本の人々の健康を支えたい」という思いから「癒しの森事業」を開始し、お客様を案内する人材を育成する「森林メディカルトレーナー®養成講座」を開催しています。 

2018年度からは、信濃町民に限らず全国に門戸を開き、2年越しでも受講できるよう毎年開催となりました。

2019年度は町内から12名、ほか県内から6名、東京や兵庫、三重など県外からも6名、20代から年配の方まで多彩な受講生が集まりました。

今回は、その養成講座の様子をお届けします。

■森をまちづくりや人間社会に活かす手法を学びたい

受講したみなさんは、どんな思いで参加を決めたのでしょうか。

「私は南信州まつかわ観光まちづくりセンター職員として、松川町の自然資源を活かしたプログラムづくりをしています。」という小林昭広さん。

「松川町は果樹栽培100年の歴史があり、年間30万人ほどが訪れます。宿泊を増やしたい、また少子高齢化など地域の課題もあり、観光を活かした持続可能なまちづくりをしたい、というのがセンターに期待されていることです。町営の宿泊施設「清流苑」と、さとゆめさんとも一緒に、松川町の森林セラピー基地「およりての森」や清流を活用した事業の企画に取り組んでいます。

今後「およりての森」での滞在交流プログラムを企画運営したり、町内のツリードームなどの宿泊施設で癒しの森の宿のエッセンスを活かしたりできるといいなと思い、参加することにしました。」

一方、小学生時代から信濃町で育ち、樹木医でもある太田由紀さんは、「子どもの頃から、身近な森がなくなっていく様子に思うところがありました。

大学でランドスケープデザインを学んだり、造園会社で働いたりする中で、人間が森を「守る」というより、ありがたく利用させてもらいつつ利益で森林を整備する、持続可能な森林整備ができたらと思うようになりました。

いま勤めているフォレストアドベンチャーも、まさに森を活用した森林ビジネスです。癒しの森は昔からリーフレットを見ていましたが、改めて調べてみると、信濃町の先駆者たる実績が素晴らしい。仕事の異動で信濃町に戻ってきたので、もう参加するしかない!と思って受講しました。」と語ります。

■森の基礎知識から実習、お客様対応の極意まで、てんこ盛りの講座内容

講座の初日は、はじめましての参加者がそれぞれ自己紹介したあと、癒しの森を牽引する高力さんによる講義です。

仕事のストレスに潰されそうな人々に森の力を届けたいという当初から一貫した思い。そこから信濃町や長野県、林野庁などと連携しながら、森林セラピーの先駆けとして今に至るまでの経緯。

さらに2日目は、森林セラピーの効果を、医学的研究の結果をもとに学びます。

午後には近くの森まで散策し、深呼吸する時間もはさみます。

「山椒だよ、かじってごらん」「染め物に使うアカネだよ」と文字どおり道草を食いながら、座学でこわばった体とみんなの顔が、森でほぐれるのを実感します。

3日目以降は、森林セラピーはもちろん、ストックをつきながら歩くノルディックウォーキング、ハーブエキスの抽出、アロマテラピー体験の実習などが入ります。

それぞれ、なぜそれらを取り入れているのか、体や心にどんな作用があるのか、お客様にお勧めしてはいけない場合は…など、実践的な内容です。

さらに、お客様のお話を「傾聴」する実習、安全管理の講義、信濃町長認定「癒しの森の宿」についてなど、おもてなしスキルも学べます。

もちろん、トレーナーとして活動する際に加入する「信濃町森林療法研究会(ひとときの会)」のことや、ひとときの会、一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団、株式会社さとゆめの三者で組織された信濃町の癒しの森事務局「しなの町Woods-Life Community」のことなど、事務的な内容もあります。

5日半の講座が終わると、充実感でおなかいっぱい。

と、まだ終わりじゃないんです。

信濃町の強みでもある冬プログラムを学ぶ、真冬の「スノーシュー実習」が残っています。

加えて、日本赤十字の救急法基礎・養成講習を修了すると、晴れて信濃町のトレーナーとして登録できるようになります。

■「根拠に基づいた癒し」「社会課題への取り組み」「多様な人材が集まる場」に感動

「長年のキャリアを積まれ、知識も豊富な講師陣には感動しました。

科学的な研究をもとに、地域の多様な方々が「癒しの森®」という事業でひとつの目的を共有しているのは素晴らしいと思います。」と小林さん。

「講義は一方通行でなく参加型で、参加者も打ち解け、いい雰囲気で充実した研修ができました。実際に「癒しの森の宿」に泊まれたことで、過ごした日々からも学び深いものになりました。」

「今まで森林セラピーは「森って気持ちいいですよね〜」と言いながら何となく森を歩くだけだと思っていました。」と太田さん。

「それが、森林の効用を「何となく」ではなく医学的に測定し監修し、根拠を明確にして取り組んでいたこと、ビジネスとしてもしっかりBtoBの方針で一貫して営業していたこと、保険制度、自殺率などの社会問題にも目を向け解決に取り組んでいること、すべてが目からウロコでした。

個人的には薬草や樹木の薬効に興味が湧きました。ちょっとした森にあるものがこんなにも有用というのは、かなりのお得感。その道を極めていきたいです。業界も年齢性別も多様な同期のみなさんにも、とても前向きな影響をもらえました。この繋がりも活かしたいです。」

■森を軸とした、官民協働のまちづくり

「信濃町は、もともと高力さんなど民間の提案から立ち上がった「癒しの森事業」を軸に、住民と町が一緒になった官民協働のまちづくりをしています。都市部の企業・団体と協定を結び、合宿や研修に信濃町の森体験を取り入れていただき、癒しを実感いただいています。」と信濃町役場・癒しの森係の川鍋幸祐さん。

「信濃町が認定する「森林メディカルトレーナー®」は、信濃町独自の手法を学んで、この森の癒し効果を最大限に引き出すお手伝いをします。より多くの人に森の癒しを届けられるように、信濃町で培ったノウハウを町外にも広めていきます。様々な地域の方々と一緒になって、癒しの森事業をさらに推進していきたいと考えています。」

信濃町は、森林療法の医学的研究では世界の先駆けで、森の癒しを活かしたいという世界中の人々の間で、既に信濃町ブランドが確立されています。

いまや全国から、そして海外から、お客様や研究者、森林セラピーを学びたいという意欲にあふれる人々が集まる町です。

ここで16年前にはじめて森の力について学んだ町民のみなさんが、森というテーマで、地元だけでなく他地域の活性化もお手伝いできるようになっている。

こんな森の可能性が、ほかの地域でもぜひ活かされてほしいと思います。

記事/さとゆめ編集部