こんにちは。さとゆめ編集部です。
「ふるさとの夢をかたちに」をテーマに、日本全国で地域政策の伴走型コンサルティングをしている株式会社さとゆめ。
今回お話を伺ったのは、日本で最初の森林メディカルトレーナーとして活動する高力一浩さん。
2003年に、現・さとゆめ長野支社長の浅原さんと共に信濃町の「癒しの森事業」を立ち上げ、森林療法の手法、トレーナーや宿の人材育成などを進め、森林セラピーを確立させた第一人者です。
信濃町では、人々に豊かな自然を感じて健康でいて欲しいという願いから、「癒しのまちづくり」を進めています。森林環境が、人の身体と心を癒す効果について、全国ではじめて医学的な調査研究が行われた町でもあります。科学的な根拠に裏打ちされた森林セラピーは、いま世界中で注目され、欧米、アジア、オセアニアなどへ広がっています。
高力さんはどんな思いをもって、「癒しの森事業」の第一人者として、活動をつづけているのでしょうか。
森林ガイドなどの経験が人々の健康をサポートするきっかけに
人々の健康に貢献する”癒しの森事業”を始めるにあたって、森林メディカルトレーナーの制度を一からつくることができたのはそれまでのガイド経験とその仲間たちのおかげだと、高力さんは言います。
「私自身、28歳の時に東京から信濃町へ戻り、登山ガイドなどの仕事をつづけてきました。その経験を通して、森が人の心の癒し、身体の健康にいい影響を及ぼすことを、ずっと実感してきていたんです。これは、後に科学的にも証明されています。もっと多くの人に森に来て癒しを感じて欲しいと強く思い、メディカルトレーナー制度をつくりました」
癒しの森事業をはじめたことで、地域に及んだ変化はありますか。
「県外から訪れる人が増え、観光業や農業にも影響がありましたね。私はメディカルトレーナーだけでなく、町の病院と国民健康保険の会長も長くやっているんです。だから“医療費がこれ以上あがらないように”とか、“町民がどうやったら健康でいられるか”についても考えつづけているため、病院、国民健康保険事業にまで効果は及んでいると考えています。
また、資格を有した80人の森林メディカルトレーナーが生まれ、町民のみなさんの健康をサポートできたことも大きな変化ですね」
森林セラピーが、どの世代の人にもより良い変化をもたらしてくれる
森林メディカルトレーナーをされてきた中で、高力さんが1番心に残るエピソードをおしえてください。
「これまで、赤ちゃんからお年寄りまで、8000人以上の方に森をご案内してきました。その中でも思い出すのは、大企業の重役の方ですね。
森を訪れるまでは、忙しさで自分を見失ったような働き方をされる方だったそうです。森林に入り心が落ち着いたことで、“失った2年間を取り戻した”っておっしゃったんですよ。
“失われた時間を取り戻す町”というのが、森林セラピー事業でのキャッチコピーであったため、衝撃的で、嬉しくなりましたね」
赤ちゃんからお年寄りまで、いろんな効果があるのでしょうか。
「そうですね。とある車いすのおじいちゃんが、植物と関わる療法の中で、急に色々と思い出を語りだしたんです。森から出た後に、そのおじいちゃんは3~4年お話を全くしていなかった方だと知りました」
日本の良さを活かした取り組みをつづけていきたい
高力さんの今後の目標や、理想的な森林セラピー事業の姿は何でしょうか。
「森林セラピーが1番効果を発揮するのは、予防医療の分野なんです。生活習慣病、がん、うつ病の予防などに効果的です。
本格的な病気になる前に森林セラピーを活用することで、平均健康寿命が延びたり、医療費を下げることにつながります。
政治や医師会、製薬会社も関係するので、すぐに大きな変化を望むのはむずかしいですが、町の国民健康保険の会長をしている立場からも、いろんな人の協力を得て医療費を下げたいと本気で思っています」
目標に向けた計画についてもおしえてください。
「予防医療を支援してくれる場所を増やす活動をしています。森林セラピー基地では信濃町が筆頭ですが、日本の山、海、温泉に恵まれた地形を活かし、日本に100か所くらい、ウォーキングなど生活習慣病に対するエビデンスの整ったさまざまな健康型保養地をつくったり、連携していきたいと思っています。
人々の生活習慣を変えるためには、ドイツやデンマークでもそうですがこうした環境が大切です。だからこそ、さとゆめの事業にも協力し、講師として私が教えられることを、伝えていくのが今の私の役目だと思っています」
地域の枠を超え、人々の健康に本気で向き合う高力さん。さとゆめも創業前から携ってきた癒しの森事業の今後が、高力さんのお話を聞いてまた1つ楽しみになりました。
記事/さとゆめ編集部