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計画起点の地方創生の限界、そして、これからの地方創生のあり方。「さとゆめ 嶋田俊平」

計画起点の地方創生の限界、そして、これからの地方創生のあり方。「さとゆめ 嶋田俊平」

こんにちは。さとゆめ編集部です。

「ふるさとの夢をかたちに」をテーマに、日本全国で地方創生の伴走型コンサルティングをしている株式会社さとゆめ

今回1年ぶりのインタビューとなるのは、さとゆめ代表取締役社長の嶋田さん。

約15年、地方創生の事業に関わりつづけています。

嶋田さんには、これまでの15年間を振り返った上で、これからの地方創生に関わるコンサルティング会社のあり方、そして、さとゆめがめざすものについてお話いただきました。

■“これからの時代に寄りそった”伴走型コンサルティングを目指す

嶋田さんが15年間、地方創生に関わってこられて、どのような変化を感じますか。

「さとゆめは、創業して7期目になりますが、創業前は9年間、地域活性化や環境保全に特化した中規模のコンサルティング会社に勤めていました。会社勤めをしていた最初の5年間、2000年代は、総研系などの大手シンクタンクが強くて、我々がどんなに良い提案をしても、なかなか仕事が取れないことが少なくありませんでした。

今、振り返ると地方自治体が、本気で地域を変革していこうというより、既定路線に〇〇総研のお墨付きが欲しいという傾向が強かったように思います。

ただ、2010年代に入ると、過疎化がいよいよ目に見えるかたちで深刻化してきて、自治体の財源もどんどん先細りする中で、人口や観光客数、新商品の売上など、目に見える成果が出るところまでコミットして欲しい、サポートして欲しいというニーズが強まってきました。

そうした空気感は業務の中で日々感じていましたし、計画をつくることよりも計画の実行フェーズの支援のほうが重要と思っていましたので、「ふるさとの夢をかたちに」を旗印に伴走型のコンサルティング会社である さとゆめを立ち上げたのが2013年です。」

この先の10年、2030年に向けては、地方創生をサポートするコンサルティング会社はどうあるべきなのでしょうか。

「2010年代は、“お墨付きのコンサルティング会社”から“一緒に走り、結果にコミットするコンサルティング会社”が求められるようになったとお伝えしましたが、2020年代は、“事業創出のパートナーとしてのコンサルティング会社”が求められるようになると思います。そのときに、単に計画や戦略を立案だけでなく、事業の立ち上げの“資金”の調達や、“人材”の確保・育成まで支援していくことが、より一層必要になるでしょう。

これまでは、優れた計画・戦略があれば、国の補助金がついて、実行してくれる地域のプレイヤー見つかるだろう、という楽観的な観測のもと、地方創生の計画が多々つくられてきました。今は、地域の若者の絶対数が激減していますから、 “人材”が、大きなボトルネックになってきています。」

さとゆめの仕事のあり方も変わってくるでしょうか。

「はい、変わらないといけないと思っています。今年の夏に全社合宿をし、2030年に向けて“さとゆめ2030”というビジョンを議論したのですが、従来のコンサルティングのプロセスを根本的に見直すことにしました。

これまでは、計画をつくることから我々の地域への伴走が始まっていたのですが、人がボトルネックになるのであれば、まず、思いや覚悟を持った人材を探し、彼らを育てるところから伴走をスタートさせていかないといけないだろうと。

“計画→資金→人材”という順で進めていた事業を、“人材→資金→計画”と、逆の順番で進めることにしました。その人の思いや覚悟が熱源となって、そこに様々な資金が集まり、集まった資金を前提として精緻な、そして無理のない計画をつくって行くことで事業がスムーズに立ち上がっていきます。ですので、さとゆめとしても、新規事業として、人材育成事業と資金調達を支援するファンド事業の準備を進めています。」

■小菅村の古民家ホテル事業から感じた、人材育成の大切さ

計画起点の地方創生から、人起点の地方創生へということですね。

「はい。今年山梨県の小菅村に古民家ホテル事業をゼロから立ち上げてきた経験で、自分自身が感じたことでもあります。小菅村では、ここ5年間で観光客が約2倍に増える一方、宿の数は減少していたんです。そうした中で、役場の地方創生事業の一環で古民家ホテルの基本構想をつくって、誰か事業にコミットしてくれる人がいないか募ったのですが、全く見つからず、2年の月日が経ちました。

このままではこの話自体がなくなってしまうと、私が思い切って手を挙げたことで、話は一気に進み、地区の方々、設計士さん、大工さん、デザイナーさんなどをはじめ50人規模のチームにまで発展しました。そして、集まったみんなで計画を練り上げていくことで、計画の細部までにこだわりと熱量が行き届き、素晴らしいホテルをオープンすることができました。自分事ですが、やはり“人起点”であるべきだなと思った経験でした」

もう1つの大きな課題の資金面は、「人の信用力で乗り越えた」と嶋田さんは続けます。

「この事業を実行するにあたり、EDGEというホテル開発・運営会社を設立して、その会社で資金調達をすることになりました。最初は自分たちだけで山梨県の地銀に融資の相談に足を運びましたが、話を聞いてもらうことだけでも難しかったんです。そこで、村長さんも一緒になって地元のいくつかの金融機関に足を運んでもらったところ、金融機関の方にも本気度が伝わり、また、村長や村の信用力もあり、創立間もないEDGEでも大きな金額の融資を好条件で受けることができました。

金融機関の方からは、業績や計画だけでなく、“なぜさとゆめやEDGEを立ち上げたのか”“なぜ、出身地でもない村で、リスク取ってやる覚悟を決めたのか”も問われました。その人がしてきたことの一貫性をみて、“この人なら事業をやり遂げてくれるだろう”と信用していただけたんです。人材起点のプロジェクトに、より可能性を見出した瞬間でしたね」

■“人の信用力”を、もっと目に見えるカタチで地域創生に活かしたい

さとゆめを今後、どんな人たちに知ってほしいですか。

「時代は今、貨幣経済から信用経済へ大きく変わってきています。個人や小さな会社でも、信用力があれば大きな企業、政府と対峙できる時代になりました。SNSでいうと、YouTuberやインフルエンサーマーケティングが分かりやすい例の1つですよね。

これからは、よりいっそう全国の頑張っている人のストーリーをさとゆめメディアなどを通して発信し、その人の信用力を構築していく助けになれればと思っています」

どんなストーリーを発信していくのでしょうか。

「信用は、その人の過去・現在・未来の一貫性から生まれるものだと思っています。これまでその人がしてきたこと、今頑張っていること、そしてこれからのビジョンを一つの“物語”として伝えることができたときに、人の“共感”が生まれます。

日本には、自分の故郷や愛着のある地域で、夢の実現や課題解決に向けて、日夜を問わず頑張っている方がたくさんいます。その方々を支える意味でも、さとゆめをとおしてまだ知られていない人や地域のストーリーを発信し、“ふるさとの夢をかたちに”するための信用経済の輪を少しずつ広げていきたいですね」

時代とともに、求められることが変わる地方創生。人の思いと熱量がこもったプロジェクトが沢山生まれていけばと思います。さとゆめメディアも、そうしたストーリーをしっかり、丁寧に発信していきます。

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記事/さとゆめ編集部