こんにちは、さとゆめの浅原です。
弊社は、私が役場職員だった頃から約20年近く長野県信濃町の“癒しの森事業”に伴走してきました。癒しの森事業は、森林セラピーを核に観光コンテンツを保養コンテンツに磨き上げ、主に都市部企業をターゲットに交流人口や関係人口を増やす事業です。また住民が主役になって「癒しの森(癒しのまち)」というコンセプトのもと、「健康」と「環境」をキーワードにした町づくりを展開し、農業・林業・観光・教育など様々な産業や取り組み等に影響を与えているものです。
まだ道半ばですが、住民が主体性を持って進めてきた結果、2011年から2015年の5年間で、直接効果約2億1,890万円・総合効果3億972万円という結果になっています(筑波大学の資産)。これは、地方創生を目指す地域に大きなインパクトを与えており、その影響でここ数年、弊社は、森林セラピー等に取り組む地域のコンサルタントが大変増えています。そのことが評価されてか、今年度、林野庁が主導する森林サービス産業事業の事務局を公益社団法人国土緑化推進機構と共同で受託することになりました。
皆さんは、「森林サービス産業」という言葉を聞いたことがありますか。森林サービス産業とは、森林空間が生み出す癒し効果などを活用して「健康」、「教育」、「観光」等に係るサービスを地域内で生み出す産業のことです。今年度から全国各地でモデル地域を選定して、森林サービス産業に取り組む地域や取り組み中の地域の見本を作っていくことになりました。またモデル地域よりも一歩手前で優良な地域を準モデル地域として認定もしています。今年度は、モデル地域が7地域、準モデル地域が9地域選定されました。
森林サービス産業では、働き方改革や健康経営に着眼し、当初から企業をターゲットに設定して、福利厚生や研修、ワーケーションの中で地域の森林サービスの利用の拡大を図っていこうとしています。そのため森林サービス産業が従業員の癒しや生産性向上に役立ったのかという、企業が納得するような科学的なエビデンスが必要です。そのためモデル地域である7地域は、各々独自の手法でエビデンスの取得を目指し、決められた事業費の中でモニターツアーを実施しています。また準モデル地域は、森林サービス産業を推進するにあたって障害となっている課題を洗い出し、それを解決していくためのワークショップ等を2回開催することができ、事務局がそのフォローをすることになっています。弊社は主にモデル地域7つのフォローをさせていただいています。今年度、新型コロナ対策を講じてモデル地域7つや、ときには準モデル地域にも入り、今までの知見を生かして支援をしてきました。今回は、モデル地域1つと準モデル地域1つの取り組みについてご紹介させていただきます。
日本が誇る世界遺産白川郷のある白川村で森林サービス産業に取り組む(モデル地域)
白川村は人口1,600人の村でありながら、世界遺産に認定されたことで年間200万人を超える観光客が訪れる観光地で、そのほとんどが世界遺産の合掌集落に集中しています。白川村も広大な森林を持っていますが、残念ながらその活用はできていないようです。しかしトヨタ白川郷自然學校の運営を受託しているNPO法人白川郷自然共生フォーラムは、その森林の活用に一躍買っており、様々な自然体験を提供しています。クアオルト式のウォーキングコース(認定クアの道を3コース)を設計し、自由に使える環境を整え、そのコースを案内できる専門ガイドの育成も行っています。
白川村では、森林サービス産業を取り入れ、近年注目を浴びている健康経営に取り組む企業や健康保険組合および協会けんぽなどに働きかけ、清浄な森林環境のなかで「運動・栄養・休養」をトータルで提供し、社員の心身の健康増進・維持に活用してもらうのが狙いです。またトヨタ白川郷自然學校においては既に多くの企業研修の受け入れの実績があり、その研修内容に健康ウォーキングを追加し、適切な運動強度(60%)による脳内血流の最大化をはかることにより研修効果の向上と心身の健康増進を両立させる構想も持っています。そのような構想も含め、今回、モデル地域に選定されました。
白川村では、企業を口説くためのエビデンスを取得するために、10月下旬にモニターツアーを実施しました。弊社も事務局として協力してきましたので内容を少しご紹介します。モニターツアーのプログラムの柱は、以下の通りで、モニターツアー中に体験いただきます。
• クアの道を使った健康増進ウォーキング2回
• 保健師による健康相談および低カロリー低塩分の健康食フレンチの夕食
• 眠る前のヨガ体験と早朝ヨガ体験
• トヨタ白川郷自然學校での宿泊と温泉入浴
クアオルトテラポイト(クアオルト健康ウオーキングのガイド資格の最高位)の資格を持つ藤本麗華氏(2019ミス日本みどりの女神)を講師に招聘し、20名ものモニターが集まっています。
今回、取得するデータは、以下の通りです。
1.睡眠とメンタルヘルスの関係に着目し、睡眠の質を測定。
2.自律神経の変化と睡眠の質を測定
3.POMSによる気分尺度の調査
4.血圧測定
すでに企業研修などを取り入れているという実績もあり、スタッフの連携は素晴らしいものがありました。森林サービス産業は、新たな取り組みではありますが、今後もっとプログラムをブラッシュアップすることで、多くの利用企業が出てくるのではないかと思っています。エビデンスの結果は、現在解析中ですが、良いデータが取れることを祈っています。
森林王国兵庫県宍粟市で森林サービス産業に取り組む(準モデル地域)
宍粟市は、兵庫県の中西部に位置し、北部には、県下最高峰の氷ノ山(三ノ丸)、第2峰の三室山、第3峰の後山など1,000m級の山々が連なり、国定公園や県立自然公園を形成する緑豊かなまちです。広大な森林面積を有するこの地域は、古くから森林資源を利用した木材・木工製品・家具等の生産が地場産業として栄えています。また「発酵のふるさと」とも言われています。宍粟市が「発酵のふるさと」といわれるのは、日本酒発祥の地である所以が「播磨国風土記」に記録されていること、発酵を支えてきた「自然資源」が豊かなこと、そして宍粟に息づく発酵の文化や伝統を「人」が現在に受け継いできたことが挙げられます。
宍粟市は、平成26年に森林セラピー基地の認定を受けるべく生理・心理効果の実験調査を実施し、平成27年3月にNPO法人森林セラピーソサエティより森林セラピー基地の認定を受けています。3つの特徴的なロードを用意し、ガイド育成にも着手して、平成28年6月にセラピー基地をオープンしています。現在、兵庫県市町村職員互助会及び一般社団法人日本自動車連盟(JAF)会員の優待サービスを実施していることもあり、この度準モデル地域に選定されました。
森林セラピーを実施するガイドですが、第4期まで養成講座を開催し、80名の受講終了者がいて、宍粟市癒しの森ガイドの会に加入しています。宍粟市では、さらに企業等の団体に利用を拡大させるため、このガイドの質の向上が課題であり、育成の強化を図りたいと思っています。そこで今回、準モデル地域の事業としてガイドスキルの向上を図るべく、課題解決型研修会を行いました。内容は、講義とワークショップ、現場研修です。現場研修では、長野県信濃町から高力一浩様を講師にお呼びして実施しています。
今回は、2つの地域ご紹介しました。
新型コロナウィルス感染拡大によって都市部の一極集中から地方への分散への時代に来たのかと思います。そのためには、地方で産業があることが第一条件ではないかと思っています。森林サービス産業は、まさにその産業を地域で起こすためのものです。このような事業に関われたことは、弊社にとってとても大きな財産です。またどの地域も住民が主役になって事業を推進している姿が我々コンサルとしては、とても嬉しい話であります。これからも必要とされるコンサルになるために弊社も頑張っていきたいと思っています。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
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